【WEB講演会報告】米国ワシントン大学ーEdward Mack教授「Brazil and “Modern Japanese Literature” ブラジルと「日本近代文学」」を開催しました

2021.10.30

GREC

 10 月30 日(土)11時から12時30分(日本時間)まで、日本大学文理学部人文科学研究所総合研究「ICTを利用した文理学部国際化」(研究代表者 閑田朋子)主催、文理学部国際交流委員会、GREC外国語教育部門共催により、エドワード・マック先生(米国ワシントン大学教授、近代日本(語)文学)の講演「Brazil and “Modern Japanese Literature” ブラジルと「日本近代文学」」がZoom上で行われました。

 

 

 マック先生はブラジルにおける日系コミュニティと文学および文化の生産と需要について研究をしています。先生の研究は、戦後日本の文学研究に内在しているナショナリズムに鋭く迫るものとして高く評価されており、アメリカにおいて、日本の近現代文学研究を代表する研究者の一人です。マック先生は文理学部の学生に親しみを持っており、今年の春、マック先生の司会で、文理学部とワシントン大学の学生による共同授業を行い、日本語と英語で『鬼滅の刃」について語り合いました。マック先生との授業は今後も続きます。

 

 

 この講演は、ブラジルへの移民が始まった1908年から1941年までの日本語出版市場の歴史に関するものです。特に1932年に発表され、『ブラジル時報』という新聞が主催した「植民文藝懸賞」の受賞作・「投機的農業の時代 An Age of Speculative Farming」(ソノベタカオ)に注目しました。この小説を媒介に、植民地文学やブラジル日系文学という系譜がどのように作られたのかについて紹介したうえで、植民地あるいはマイノリティによる文学的な実践をとおして、日本の単一民族国家観や、国民文学・文化という概念を批判的に捉え直すことの意味についてお話をしてくださいました。

 冒頭の紅野謙介教授(文理学部学部長)のご挨拶のあと、講演は全体に英語で行われました。スクリーンには英語字幕がつき、研究グループの教員によって、チャットで随時、難しい用語の日本語訳や簡単な解説が流されました。また講演が終わった後、司会を担当した高榮蘭が日本語で講演の要旨を確認しました。ICTを活用し、たいへん刺激的な研究をしていらっしゃるマック先生の講義を直接英語で聞き、それをまた日本語で整理し、理解を高めるための工夫をしながら質疑応答につなげました。

 この講座の出席者数は80名を超えており、文理学部の学生・教職員のテーマについての関心の高さがうかがわれました。チャットを通して、日本語と英語による質問がたくさん寄せられており、予定時間を超える形でいろいろな話し合いが行われました。

 参加者のアンケートからは、「ブラジルと日本のつながりについて今までの授業などで深く説明されたことがなかったのでとても勉強になった」など、新たな観点から日本語文学を考える機会になったというコメントが寄せられました。 さらに、英語学習に関しては、ネイティブの英語を理解するのが難しかったという意見がある一方、75%が楽しめたと回答し、字幕や要約を使って講義内容を理解し、92%が英語学習の動機付けになったという回答でした。

 

 

 

 

文責:高榮蘭(文理学部国文学科・教授)

 

連続講演会、Ted、フライヤー、20210915